横浜市鶴見区の内科・循環器内科・呼吸器内科・アレルギー科

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新型コロナウイルス感染症 感染者Aさんの入院記録

2021年8月中旬に子どもが持ち込んだデルタ株のコロナに感染し、救急搬送で入院することになりました。以下、家庭内クラスターと入院体験談を記します。みなさんの何かの役に立てばと思います。

【コロナが家庭に入ってきた】

8月17日、大学生の長女が38度を超える発熱をしました。ワクチン接種の1回目から1週間ほどたった時でした。身体のだるさや発熱から、コロナを疑いました。新型コロナウイルス感染症専用ダイヤルで連絡し、PCR検査を受けるため、近隣の病院を紹介してもらいました。残念ながら当日は検査が受けられず、翌日の朝の検査となりました。

8月20日、検査から3日後、病院から陽性の連絡がありました。それを受けて、わたしも含めて残りの家族はこの時点で、予防接種が出来ていなかったため、かかりつけのK病院でPCR検査を実施しました。家庭内では発熱のタイミングで、全員マスク、トイレ、洗面所などの共同スペースでのアルコールを用いた消毒を始めました。

8月21日、保健所から初回のコンタクトあり。症状のヒアリングは数日後になるとのことでした。神奈川県からパルスオキシメータが届き、LINE連絡で発熱や体調を連絡し始めました。この日に、次男と私が発熱。

【感染後経過】

8月22日、神奈川県からご飯やカレーなどの常温食とトイレットペーパーなどの日用品が届きました。かかりつけのK病院が、解熱剤を処方してくれました。

8月23日、自分も含めたそのほかの家族のPCR検査の結果が来ましたが、陰性。38度台の発熱中の次男と私は、再度K病院でPCR検査を受けました。症状は、身体の痛み、頭痛、悪寒で、解熱剤はほとんど効かなかったので、ステロイド剤も処方してもらいました。このステロイド剤で劇的に発熱が下がり、ほぼ平熱となりました。神奈川県から長女用に冷凍食品が届きました。療養期間のみ2日おきに届くので、保健所からの連絡が遅いと満足に届かないことになります。長女の場合は2回の送付のみでした。

8月24日、私の方は、熱は36度台で落ち着いていました。身体の倦怠感あり、酸素飽和度は96%と低め。下痢が始まりました。

8月25日、次男と私がPCR陽性であることがわかりました。この時点でようやく保健所から長女への病状ヒアリングがあり、順調ならば、27日に自宅療養解除とのことでした。

8月26日、K病院で、残りの子ども二人に再度PCR検査を実施。合わせて薬を処方してもらいました。保健所から次男と私に連絡があり、解熱剤なしで症状が出ていなければ、8月31日に自宅療養解除になるとの連絡がありました。長女は自宅療養解除となり、ようやく家族の中で外出できる人が出来ました。

8月27日、K病院から連絡あり、発熱中の一人は陽性、発熱ないほうが陰性でした。感染した家族は、全員長女と同じ2階の部屋の住人で、1階の住人は感染しませんでした。

8月28日、子どもたちは解熱剤で安定。酸素飽和度も大丈夫でした。一方私は、体温は37度から39度の間を行ったり来たり。酸素飽和度は96%。身体がきつくなってきました。

8月29日、発熱は38度から39度。シャワーを浴びたら、肺の形状が腫れぼったく膨らんでいるように見え、ちょっと危機感を感じました。

8月30日、体温は39度から36度に乱降下し、酸素飽和度は95%から93%。

【急変、緊急搬送、入院】

8月31日、朝5時に起きると、発熱は39度。酸素飽和度は88%になっていました。横浜市のコロナ119に連絡し、状況を伝えるとともに、自分で119番通報して救急車を呼ぶことにしました。簡単な着替えや常用薬(血圧、コレステロール、尿酸)のみ鞄に入れて、準備をしました。6時半に救急車が到着。すぐに酸素吸入が始まり、病状経過を救命救急士さんに話しました。

自宅前で停車したまま、受けいれ先の病院を探してもらいました。17病院連絡しても受け付けてもらえず、最終的に川崎市のS病院が酸素吸入で受け入れてくれ、その後病院を探してもらうことになりました。

S病院では、先生から、ここでの治療はできないけど、絶対病院を探すからねという言葉が唯一の希望でした。

14時過ぎに、J病院の受けいれが決まり、再度救急車で移動。コロナ専用の隔離病棟に入りました。すぐに血液検査とCT撮影を行い、肺の炎症を抑えるデキサメサゾン(ステロイド剤)と抗ウイルス薬(レムデシビル)の点滴が始まりました。看護師さんから、うつぶせ寝を推奨されました。肺炎の炎症は背中側なので、うつぶせ寝にすると呼吸は楽になるとのこと。ステロイドを使っているため、食前に血糖値を測定し、必要に応じてインシュリン注射をしてもらいました。また、血栓予防のため血液をサラサラにする薬も服用。

9月1日、昨晩は、高熱と呼吸に苦しみながら、良く分からない人生の振り返りの夢を見続けていました。朝の時点で、体温は37度、酸素をかなり流した安静状態で酸素飽和度90%。歩くと呼吸が苦しく、トイレに起きて、尿瓶で用を足すのも大変な状態。医師と話をして、尿管カテーテルを入れることにしました。尿は勝手に排出されます。血液検査の結果から、炎症を示す数値が非常に高く、もともとあまり強くない腎臓の数値も悪かったです。血栓の発生を示す数値も悪い状態でした。CTの結果も肺が炎症で真っ白でした。これはだめかもしれないとかなり弱気になりました。

9月2日、レントゲン撮影と血液検査を実施。また点滴も続けていました。食事のためにベッドから起き上がると酸素飽和度は90%前後になり苦しい状態でした。食欲はありました。味覚異常もそれほどなかったです。尿管カテーテルをしているため、看護師さんが毎日消毒してくれます。今日は体を拭いてもらい、着替えを行いました。本当に看護している方々に感謝です。昼夜問わず、感染防護をしながら、Ⅰ時間おきに見回ってくださり、ナースコールを押すとすぐに来てくれました。まさに天使のようでした。

9月3日、一日中ベッドから動けません。排便は大きな課題で、もう数日出ていませんでした。夜下剤をもらっても難しい状態。供給する酸素の量が多いため、ネーザルハイフロー療法を行うことになりました。これは、毎分30L~60Lという大量の酸素を温度湿度コントロールして送ることが出来る装置です。装着した状態で食事や会話もできますが、これをつかわなければならなかったほど悪く、区分で言えば中等症2で、重症の瀬戸際だったようです。

家族にも病院から連絡が行き、週末がヤマ場で、かなり危ないと連絡があったそうです。

9月4日、レントゲンと血液検査を実施しました。炎症の数値は下がってきていますが、肺の状態は変わらず、粘っていきましょうということになりました。1週間近く髪の毛を洗っていなかったのですが、看護師さんに洗ってもらいました。排便ができていなかったのでついに浣腸して、1週間ぶりにできました。おなかはすっきりしました。

9月5日、早朝いろいろと考えました。最悪のケースを考えて、弟と長男にLINEで引き継ぎ事項を連絡しました。まだやり残したことはいろいろあるなとか、子どもたちどうなるのかななど、考えていたら、涙が出てきました。まだ次の世界には行きたくないと思いました。午前中、先生と相談して、ネーザルハイフローを外して様子を見ることになりました。安静状態で、普通に酸素を流して、酸素飽和度は96%。食事で92%。肺はまだ重く深呼吸はできない状態ですが、酸素を少しずつ絞っていくことになりました。

9月6日、ひたすらうつぶせ寝。朝、血液検査を実施しました。今日の数値で正常値の三倍程度。着実に減ってきていました。先生からは、峠は越えたので、今後ステロイドの点滴を減らしていき、錠剤にして、酸素吸入がなくなれば、退院が見えてくるとのこと。足の筋肉は自転車で鍛えていたにも関わらず、劇落ち。ひらめ筋は見る影もなく、大腿四頭筋もやせ細っていました。

9月7日、ベッドの近くに携帯トイレを置いてもらい、酸素吸入しながら、夜中に2回排便がありました。体温は36度。酸素飽和度は、吸入時で97%。病室で秋の虫の鳴き声が聞こえてきました。

9月8日、午前中に尿管カテーテルが外れました。また、頭を洗ってもらいました。酸素ボンベを抱えて、病室にあるトイレまで移動できるようになりましたが、足は動くたびに、ピキピキつりました。歩くと酸素飽和度は90%を割り込みました。体重は5kg程度減りました。

9月9日、ステロイドは点滴から錠剤にかわり、指につけていた常設のパルスオキシメータも外れました。車いすでシャワー室まで移動してもらい、自分でシャワーを浴びました。CTの結果は、まだ肺に影はあるが、週末退院を相談することとなりました。このJ病院は急性期病院なので、容体が安定すれば、退院となります。

9月10日、リハビリの理学療法士さんの指導がありました。足の筋肉については、たんぱく質を取ること、ストレッチとスクワットなど、運動するように言われました。肺炎の炎症に対応するエネルギーを取るため、足の筋肉をつかうそうで、本当はもっと体重が減るとのこと。

9月11日、9時に身の回りの準備を完了。10時に看護師さんから退院の説明がありました。弟と長男が、自動車で迎えに来てくれました。夕方、リハビリのため、近所を3000歩ほどゆっくり歩きました。

【退院後の後遺症】

パルスオキシメータを片手にひたすら自宅の周りで歩行訓練を行いました。ちょっとした坂や階段は酸素飽和度が90%を割り込み、立ち眩みしそうになりました。とにかく呼吸の状態を見ながら、無理のないように、休みながらリハビリしました。

筋トレも欠かせませんでした。理学療法士の友人にメニューを作ってもらい、朝晩ストレッチを行いました。

最後に、退院後の後遺症についてお話します。

味覚嗅覚異常:特に味覚は、食事の食感しかわかりません。カレーライスの味がまったくわかりませんでした。また、マヨネーズなどお酢が入っているものは、苦みになります。ドレッシング付きのサラダは苦くてとても食べられませんでした。元日にやっている芸能人格付けチェックに出演したら、全部間違えると思います。2ヵ月ほどしてからようやく回復しました。

発疹:背中じゅうに赤い発疹が出ました。かゆくはなく、2ヵ月ほどで気にならなくなりました。ステロイドが原因かもしれません。

身体の痛み、頭痛:退院後の1ヵ月は残りました。

不眠:夜中にたびたび起きました。3ヵ月でようやく朝まで眠れるようになりました。

呼吸の苦しさ:3ヵ月でようやくという感じです。10月末の外来通院でもまだ炎症が残っているとのことでした。

コロナの収束にはまだまだ時間がかかりそうですが、この体験が何かの形でお役に立てばと思います。うちの子どもたちのように、軽症で治るかたもいらっしゃいますが、私のように、1週間程度で、急激に重篤化してしまう人もいます。コロナは甘く見てはいけないと思いました。医療従事者の方々、食事などサポートしてくれた友人に心から感謝します。

※K病院 くらた内科クリニック

【モトブログ】 コロナ入院体験と生田緑地ばら苑 20211023 - YouTube@